- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
一人暮らし高齢者の身体的および精神的自立度の特徴
独居という言葉は,広辞苑では「ひとりでいること.ひとりで住むこと」と記されている.独居高齢者という言葉の印象は,地域社会から孤立して自宅に一人で暮らしている高齢者として認識することが多いように思うが,自立して地域社会との交流を持ちながら一人暮らしを継続している高齢者も数多く存在する.また,高齢者以外の年代には,独居ではなく単身や一人(ひとり)暮らしなどの修飾語が使用されており,高齢社会白書でも,「一人暮らし高齢者」という表現を用いているので,本稿でも“一人暮らし高齢者”と記載することとした.
高齢者の居住形態と健康や自立度,生活課題との関連については,海外では1980年代後半から,日本では1990年代から多く研究されるようになった.居住形態の一つの種類である一人暮らし高齢者の身体的,精神的自立等に関する研究では,高齢者の様々な居住形態間での比較,一人暮らし高齢者のみを対象とした健康状態や生活実態の記述,高齢者の健康状態に関連する多様な要因の一つとしての居住形態(一人暮らし)といった視点で取り組まれてきた.日本では,要介護高齢者や,退院後の医療依存度の高い高齢者,精神障害を有する高齢者などを対象として,住み慣れた地域で一人暮らしを継続するために,専門職が連携しながら社会資源を活用・創出して支援した実態を丁寧に記述した研究や報告が多かった.また,一地方公共団体の一人暮らし高齢者全数を対象とした研究では,約76%が健康度自己評価で「非常に健康」「まあ健康」と評価し,約67%が高い活動能力を有していたとの報告がある1).加えて,地域の一人暮らし高齢者は約70%が自立していたという報告もある2).また,一人暮らし高齢者は他の居住形態の高齢者と比較して,抑うつ傾向にあり,主観的幸福感が低い3),飲酒や喫煙などの保健行動に特徴がある4)などの報告や,一人暮らし高齢者の中には,食物摂取が不適切で低栄養のリスクがある対象の存在も指摘されている5).これらのことから,一人暮らしというのは居住形態の一つであるから,様々な自立度を横断して存在するが,断面で捉えると,70~80%は自立して生活している(図).
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.