Japanese
English
講座 リハビリテーションと住宅改造・6
車いす使用者の利用を考慮した住宅改造―考えかたの基本特性と実例の考察
Rehabilitation and House Adaptation. 6: Housing Design for the Wheelchair User
八藤後 猛
1
Takeshi YATOGO
1
1国立職業リハビリテーションセンター研究部
1Technical Research Department, National Vocational Rehabilitation Center for the Disabled.
pp.401-406
発行日 1990年6月15日
Published Date 1990/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551103033
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
Ⅰ.初めに
車いす使用者が,在宅で日常生活を送ろうと考えた場合,我が国の家屋の多くは,そのままでは生活できず,多少なりとも改造が必要となる.しかし多くの場合,その家屋は車いす使用者が生活することが考えられていないばかりか,わずかな改造さえもやりにくい大きな問題点がいくつかある.その一つは,我が国の気候は多雨多湿のために,床の高さが地表や道路から高いことで,室内も古い家屋ほど土間や敷居の段差に悩まされる.また,廊下の幅や建具の有効幅も,一般の家屋では車いすではスムースに通過できない.こうした住環境を変えるためには,技術的にも経済的にも容易ではない.したがって,家屋改造の困難さが在宅生活を諦めさせる要因となっている例はあまりにも多い1).
改善費用については,初期投資にある程度の費用がかかるので,家族としては最小の投資で最大の効果を期待することが多い.身体機能を考慮した住宅改善も,一般的には費用を多くかければかけるほどその効果は出てくるが,その関係は必ずしも正比例ではない.筆者らの経験では2,3)一般に,わずかな費用をかけるだけでも,身体に障害がある者が,自分自身でできる生活動作が飛躍的に多くなる上,介助者の負担の軽減への効果は大きく出てくる.しかしその後は,あまり多くの費用をかけても,それに比例した効果は得にくいという傾向がある.これは逆の言いかたをすれば,大きな効果をねらって一部分に多大な費用を投資するよりも,住宅内のさまざまな場所に,簡便な配慮を数多くしたほうが良いということでもある.
以下には,そうした視点に立った最小限の改善で行なえる方法や事例を主に示してある.
Copyright © 1990, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.