書評
―渡邉英夫(著)―「脳卒中の下肢装具(第2版)―病態に対応した装具の選択法」
小峯 敏文
1
1熊本総合医療リハビリテーション学院・義肢装具学
pp.1046
発行日 2012年11月15日
Published Date 2012/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102638
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脳卒中に対する下肢装具は,その医学的リハビリテーションの中で従来から広く用いられてきた.日本脳卒中学会,他がまとめた「脳卒中治療ガイドライン2009」をみてみると,急性期リハビリテーションでは装具を用いた早期歩行訓練がグレードA,歩行障害に対するリハビリテーションの項では歩行改善のために短下肢装具使用はグレードBとされ,エビデンスからみても効果が優れていることがわかっている.また近年では,単に医学的治療といった側面のみならず,在宅すなわち介護や福祉の領域においても,ユーザー側からみればQOL(quality of life)そのものに直結するほど大変重要な役割を持つようになった.
ところで,脳卒中リハビリテーションの分野では,これまでにさまざまな機能を有する装具が研究・開発されてきた.その背景には,病態がより明らかになってきたこと,人の正常歩行の理解が進んだこと,さらには医学的リハビリテーションそのものの諸技術が進歩してきたことなどがある.他方で,装具にも多様な機能が求められるようになっており,各種プラスチックやカーボン繊維をはじめとする新しい素材の導入によって,装具自体がさらに多機能化してきた.機能障害に対する下肢装具として,単に変形の予防や矯正といった基本的な役割のみならず,脳卒中の回復段階に求められる多様な機能,例えば足関節の固定,制限,補助,制動に対応できるものも登場してきたのである.
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