書評
—篠崎英夫 著—精神保健学/序説
樋口 輝彦
1
1国立精神・神経医療研究センター
pp.888
発行日 2017年9月15日
Published Date 2017/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205457
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
著者は昭和41年に慶應義塾大学医学部を卒業されたので,小生より5年ほど先輩になる。大学は異なるが,精神医学,医療の分野でほぼ同時代を過ごしてきた小生にとっては,著者の足跡を追うことは自らの歩んだ道と重ね合わせる,あるいは照らし合わせることができる。個人的には私にとって,このような意味があり,大変興味深く本書を読ませていただいた。しかし,本書はそのような個人レベルの関心を超えた日本の精神科医療,医療行政を考える上で重要かつ貴重な意味を持っている。
著者は,ご承知のように,公僕としての仕事の大半を精神保健医療福祉行政に注がれた。1970年代から2002年までの30余年間,行政の立場で一貫してこの領域をリードされたが,この30余年間は戦後日本の精神保健・医療行政の大きな変革期であり,重要な施策,法律が生まれた時代であったことを考え合わせると,まさにわが国の精神保健・医療行政変革の中心人物と言っても過言でなかろう。この著書の第6章「戦後医療のエポックと医療行政」は戦後の精神保健医療行政の推移が粕川氏(医学出版社の編集者)と著者の対談としてまとめられているが,当時実際に行政を担当されたご本人の解説だけに,臨場感が伝わってくる。著者は障害保健福祉部長時代に「精神保健福祉士法」の成立にかかわり,精神保健福祉士の国家資格化を実現させ,健康局長時代には「健康日本21」の策定にかかわり,その後医政局長時代には「新医師臨床研修制度」の準備に取り組まれたが,第6章では当時のいきさつが詳しく述べられており,単なる歴史的資料の解説とは一味違う内容である。
Copyright © 2017, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.