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IDストレッチング第2版を手にしたとき,「なんと立体的で解りやすい本であろう」と印象深く思った.本書は,1999年に名古屋大学医学部保健学科の鈴木重行教授が「個別的筋ストレッチング(IDストレッチング)」という新しい概念を世に送り出してから約7年の歳月をかけて,先生の臨床経験の積み重ねと,各地での指導を通じて気づいた点を検討し改良を加え,さらに症例報告も盛り込んで,このたび新しい「IDストレッチング」として上梓された最新版である.先生は各地での指導の折,常に強調して話されていることがある.それは,解剖学と神経生理学的知識に精通することである.「第2版の序」においてはさらに次のように述べられている.「IDストレッチングを治療法の一つとして用いるためには,解剖学・神経生理学などの基礎知識に精通し,疼痛抑制や筋伸張の理論的背景を第三者に説明できることがさらに重要である」.この科学的根拠に基づいた説明の重要性は,本書の「第1章 IDストレッチング概論」「第2章 IDストレッチングのための基礎知識」において,豊富な解りやすい図とともに丁寧に説明されている.
さて,解剖学・神経生理学の知識に精通するとはどのようなことなのか,それは,解剖書に記載されている筋の名前を単に羅列的に覚えることではなく,一つの筋あるいは周辺の筋の立体的な構造(三次元的構造)を体表に投射して覚えた知識であり,いわゆる臨床に役立つ生きた知識の習得のことであろう.そのことは,「第3章IDストレッチング」「第4章IDストレッチングの実際」において,随時,ターゲット筋だけでなく周辺筋との関連が三次元的にカラーでイラスト化され,しかもIDストレッチングの実際をカラー写真と同時に目にすることができることから確信できる.まさに,生きた知識の習得が治療法の展開において必須となることの教授と受けとめたい.神経生理学的知識においては,等尺性収縮をリラックスしている筋に対して行うと,逆に筋の緊張を助長する危険があることの理解は臨床において重要である.
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