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Rehabilitationの外来語を初めて見聞したのは,昭和30年代であった.昭和40年,理学療法士及び作業療法士法が制定されるまで,リハビリテーション医学・医療関係の書物の多くは英語版だけであった.当時,Kamnetz HL(MD)が編集した「Physiatric Dictionary」(Charles C Thomas Publisher, Springfield, USA, 1965)を手にしたのであった.専門用語の語彙をこの辞典で索引することで新しい知識を得ることができた.総数168ページの小さな事典の中に見出した“exercise”の語に37,“gait”の語に25の技法の呼称があり,それぞれに簡単な解説が含まれていた.用語に関して今まで学習したことのない理学療法のテクニックがあることを知る喜びを感じたものであった.
40余年の時を経て,このたび,監修・奈良 勲氏,編集・内山 靖氏により,理学療法を“学”として標準化し,独自性を具現化するものとして企画され,主に理学療法士の執筆による「理学療法学事典」が医学書院から発刊された.この重厚な「理学療法学事典」を手にしたとき,リハビリテーション関連の専門用語の習得に飢えていた当時と同じような感動が新たに呼び覚まされた.総数約8,000用語の中には,これまで学習によって馴染んだ用語がページを埋めている.何気なくめくったページには今まで知らなかった用語が表れ,この語の語彙はご存知か,とばかりに語りかけてくる.書棚を埋め尽くすほどのリハビリテーション関連の書物は,日本語版が格段に多くなった中にあって,用語は欧和で示され,語の解説は簡潔でとても理解しやすい.略語索引と欧和索引のページは,診療録や研究論文を書くとき,用語の使い方によき相談相手になってくれよう.情報が過多になるほど未知の用語に接することが多くなっている.本事典は,臨床,研究,教育の各分野に業務する理学療法士ばかりでなく,看護師,作業療法士,義肢装具士,言語聴覚士,ソーシャルワーカー,介護福祉士,医療秘書,司書など,リハビリテーション医療に従事するものにとっても,理学療法学をさらに理解する事典として薦めたいと思う.欲を言えば,用語によっては語の意味を補う図がもう少し多ければ意味が深められるのではないかと思う.
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