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日本では年間5万人以上の方が心臓外科手術を受け,その数は右肩上がりに増え続けています.また,早期リハビリテーション加算の対象が,開胸手術後の患者にも拡大されたこともあり,理学療法士が心臓外科手術後に理学療法を行えるチャンスが増えました.「心臓」というと,ひるんでしまう理学療法士も多いことと思いますが,社会が後押しをし理学療法士に期待しています.
まず金子論文では,心臓外科手術の進歩について詳細に説明していただきました.各手術の歴史的な変遷から最新の手術まで,図を多く取り入れながら概説いただき,大変わかりやすい論文となりました.金子氏が普段から実践している流行に左右されない患者のQOLを考えた丁寧な手術が垣間みえます.横井論文では,米国では心臓外科医が少なくなったとまでいわしめる冠動脈インターベンション治療の進歩について大規模研究を踏まえて詳しく説明していただきました.また,冠動脈インターベンションにおいて日本のリーディングホスピタルである小倉記念病院での心臓リハビリテーション導入プロセスについても紹介いただき,いわゆる「カテ屋」と揶揄される循環器内科医師とともに働く理学療法士にとっては強い支えになる必読の論文です.渡辺論文では,現在臨床でもっとも問題となっている高齢者や身体機能障害者に対する心臓外科手術後の理学療法について紹介いただきました.理学療法を行ううえでの実施上の注意点について,各種検査結果の値が意味することや早期離床の効果のメカニズムも紹介いただき,実に臨床的な力作と感じています.また,櫻田論文では重症心不全に対する左室補助人工心臓(LVAS)について,松尾論文では心臓移植について,具体的な症例を取り上げたり,症例の特徴を詳細にお示しいただきました.日本ではドナー不足の問題があり,今すぐ移植患者が増えることはないと思いますが,その現状について知っておくことは今後の理学療法にとって重要だと思われます.また,その一方で積極的な自己心機能の回復を目指したLVASの使用が増加していることから,櫻田氏の12症例の経験から導かれた論文は大変実践的な内容になっています.
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