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「循環」を考える場合,心臓がまず頭に浮かびますが,血液を各種臓器や組織に送る血管(末梢循環)も極めて重要です.60兆にも及ぶ体細胞数の生存に必要な栄養は血液で運ばれるため,血管のコンディションは全身に影響することになります.19世紀末の医聖ウィリアム・オスラー(Sir William Osler,1849~1919)は,「ヒトは血管から老いる」と警告しており,病態が進行し,循環障害が目に見えるようになったときには,相当に病状が進行しているので,理学療法の実施に際しても心臓から全身血管に至る循環障害の予防や危険因子への配慮が必要です.
さて,本号の特集は「末梢循環障害の理学療法」についてその最前線をまとめていただきました.水落論文では,末梢循環障害の病態生理,症候学,医学的管理について,わかりやすくまとめていただきました.特に病態生理を理解した上での他覚的徴候の評価は,「人間の手で直接行われる理学療法(山本泰雄氏,とびら)」になくてはならない技術であり,予防やリスク管理に欠かすことのできない重要な評価と思われます.佐藤論文では,理学療法士の最大の武器である運動療法のエビデンスについて詳細に紹介していただきました.まとまったレビューが少ない中で,読者には心強い論文をおまとめいただいたと思います.また,津野論文では,深部静脈血栓症・肺塞栓症の予防についての取り組みについて紹介いただきました.理学療法は単なる対症療法ではなく,疾病の予防も包含することを示す貴重な論文です.林論文で解説いただいた人工炭酸泉治療は,理学療法の古典的な温熱療法でありながら,テレビでも取り上げられるトレンドの治療法です.そして,ハートフィール論文では,本場ドイツでのリンパドレナージについてご紹介いただきました.
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