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Neumann D. A. のKinesiology of the Musculoskeletal Systemがこのたび医歯薬出版社から「筋骨格系のキネシオロジー」として訳著が出された.この種の教科書はリハビリテーションに関わる医師,理学療法士・作業療法士にとって長年の夢であったが,なかなか適切な教科書が世に出なかった.2002年にMosbyから出版された本著は筋骨格系解剖学,神経筋生理学,バイオメカニクスの3つの観点から書かれている.また,運動学的概念を理解するために650以上にのぼるイラストを挿入しており読者にとっては大変ありがたいことである.しかもこれらのイラストはD. NeumannとE. Rowanのオリジナルであり運動学を理解するのに極めて有意義なものと高く評価される.この著を和訳し日本での医学教育やリハビリテーションに関係する人々に少しでも貢献しようと考えられた監訳者の嶋田教授および平田助教授に敬意を表したい.和訳は原本に忠実になされている.各章の訳者は異なっているが訳者のほとんどが神戸大学における理学療法専攻の教員であるためか文章はそのトーンや訳しかたが一致していて読みやすい.
第1章では運動学とは何かについて,「転がり,滑り,軸回旋」の基本関節運動や,運動力学ではニュートンやトルクの意義を述べている.第3章における筋の生理学の解説では図が理解を深めさせてくれる.第4章の生体力学の記述は過去の類書よりもはるかに理解しやすいように記述されている.そして何よりも本書の特徴は第5章以降の記載である.すなわち,各筋の機能はもとより関節との相互作用を分かりやすく記載するとともに,筋の代償作用を詳述しているところにある.始めにも述べたが,本書は図がわかりやすく描かれているので理解しやすい.私は今まで大学の講義でトリックモーションや代償作用について学生に熱心に教えてきたが,このような作用を詳述した適当な教科書がなかったのを残念に思っていた1人である.この書を利用することによって運動学の知識が広まりリハビリテーションに関係する医療従事者さらには整形外科医や医学生が恩恵を受けることは間違いない.和訳していただいた諸氏に敬意を表すると共に,この書が多くの人々に愛読されることを希望している.
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