書評
―嶋田智明,他(編)―「課題別・理学療法技術ガイド」
有馬 慶美
1
1新潟保健医療専門学校
pp.590
発行日 2008年7月15日
Published Date 2008/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101214
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「課題別」.なんとも心惹かれる切り口である.なぜならば,理学療法士の使命は,患者が抱える問題(課題)を解決することにあるからである.たとえば,片麻痺患者は脳卒中という疾患自体に困っているわけではない.脳卒中により起こった「歩行障害」などに困っているのである.つまり,これらの「課題」を解決してはじめて理学療法士の役割が完遂する.したがって理学療法士として知りたいのは,患者が抱える「課題をどうとらえ,いかに実践するか(本書副題)」なのである.この切望していた知識や技術そして実践例が本書にある.ここに他書にない優れた切り口を見出すことができる.
これまでに出版された理学療法関連書籍を分類すると,その内容から2つの軸が存在する.1つは理学療法技術別の軸であり,もう1つは疾患別の軸である.本書の先行シリーズである「図解理学療法技術ガイド」では技術軸と疾患軸から理学療法をガイドしている.続編である「アドバンス版」は技術軸を掘り下げた内容である.実際の理学療法はというと,症例に応じて疾患軸と技術軸の交点を見出して実践される.そこに一石を投じるのが本書である.患者が抱える解決すべき課題を遭遇頻度の高いものから明確に提示し,その解決方法を明快に,かつ実践的にガイドしている.そういった意味から,本書は疾患軸と技術軸の交点を明示し,それを掘り下げた第3の軸(課題軸)の書籍といえる.本書は理学療法書籍に新たな課題軸を授けたという意味でも一読に値し,またそれを読む者に新たな理学療法の捉え方を与えてくれるであろう.
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