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臨床実習において,学生が対象者の理学療法評価を行う上で,「なぜ,その評価をするのか,理由を説明して下さい」とか「他部門からの情報をどのように解釈するの?」などの質問をClinical Educator(CE)から受けることがある.そこで,うまく説明できないという光景を目にすることも多い.この要因としては,各評価項目の背景とその結果がもたらす影響について,十分理解できていないのではないかと感じていたところである.これまでの理学療法評価に関する書籍といえば,検査項目別の実施方法を示したものや疾患別に項目が列挙されたものが中心であり,理論的背景を理解するためには,他の書籍と合わせ読むことが必要であった.そこで,理学療法評価を実施する際の理論的背景や結果の判断を理解することが不可欠と考え,学生用の学習の資料を整理していたタイミングで本書を手にした.
本書は形態計測(形からみる),運動機能(動きをみる),生理機能(体の働きをみる)という3領域25項目にわたる理学療法評価項目について,「○○をおさらいしよう」「○○の診かたの理論的背景」「Q & Aでさらに理論的背景にせまる」という一貫した構成により解説がなされている.なかでも,理論的背景において「だからこうも言える」「よくあるピットフォールとその対処法」が設けられている.ここでは,単に表面的な理論だけではなく,各著者がそれぞれの評価をどのように掘り下げ,対象者の抱える問題の核心にせまろうとしてきたのかという神髄が示されている.また,ピットフォールとしては,学生が間違えたり失敗したりしやすいポイントについて,その対処法とともに示されており,CEの立場においても,どのようなミスを学生が犯しやすいのか,そして,予めどのように誘導しておくといいのかが理解できるように配慮されている.本書を読み解き,理解していくことで,対象者に対する理学療法評価を,無駄なく,もれなく,効率的に,実施していくことができるようになると感じた.
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