特集 理学療法技能の評価と学習支援
生涯学習に応じた臨床技術の評価と学習支援
福島 統
1
Osamu Fukushima
1
1東京慈恵会医科大学教育センター
pp.287-293
発行日 2012年4月15日
Published Date 2012/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102242
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臨床技術の学習とは
技術の獲得と知識を覚えることとは別々に論じられることが多いが,本当にそうなのだろうか.「認知心理学では,事実や概念に関する知識を宣言的知識(declarative knowledge)と呼ぶのに対して,『駅までの行き方』『コンピュータの起動の仕方』というような,やり方に関する知識を手続き的知識(procedural knowledge)と呼んでいる.スポーツ,自動車の運転,タイプライターの習得のような感覚運動学習から,数学や理科における問題解決の学習まで,スキル(技能,わざ)と言われるものは,手続き的知識の獲得と考えることができる.」1)別の言い方をすれば,宣言的知識は言葉で表せる知識であり(わかること),手続き的知識とは作業を行う方法に関する知識(できること)と言える.すなわち臨床技術の獲得とは,その作業に関する「手続き的知識」を身に付けたということになる.
静脈採血を例にとれば,①腕を露出させ,②駆血帯を巻き,静脈を浮き上がらせ,③アルコール綿で消毒し,④ある角度で針を挿入し,⑤針に血液が入ってくるのを確認し,⑥血液を注射器で吸引し,⑦駆血帯をほどいて,⑧アルコール綿を準備して,針を抜き,⑨圧迫止血を行う,という「目的」を持った知識の繋がりとして臨床技術を行っている.この目的を持った作業を行う一連の宣言的知識とその宣言的知識を組み合わせ,やり方に関する知識である手続き的知識を利用して行っているのが技術ということになる.
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