特集 下肢機能再建と理学療法
悪性骨腫瘍に対する下肢機能再建と筋力障害に対する理学療法
高木 啓至
1
,
井上 悟
1
,
佐藤 睦美
2
Keishi Takagi
1
1大阪大学医学部附属病院リハビリテーション部
2大阪保健医療大学保健医療学部リハビリテーション学科
pp.1023-1031
発行日 2011年12月15日
Published Date 2011/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102136
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はじめに
悪性骨腫瘍は罹患部位によって手術方法や機能障害が異なるため1),すべてをまとめて述べることは難しい.そこで今回は悪性骨腫瘍に対する主な機能再建方法と,膝関節周囲に限局した筋力障害に対する基本的な理学療法アプローチについて解説する.
悪性骨腫瘍に対する根治的治療は手術療法である.従来は切・離断術が行われていたが,画像診断技術・化学療法・再建材料の進歩などにより,患肢を残す患肢温存手術が主流となっている.患肢温存手術の主な適応は,①切・離断術とほぼ同等の根治性が得られること,②切・離断術と同等か,それ以上の機能が得られることなどが挙げられる2).しかし腫瘍の神経・血管への浸潤や病的骨折などにより,術後合併症や局所再発・転移の危険性が高く,術後患肢機能の再獲得も十分に期待できない場合は,現在でも切・離断術が選択される.
この手術療法に加えて,腫瘍種別プロトコルに準じた術前・後化学療法(neoadjuvant chemotherapy)や放射線療法が補助療法として行われ,特に高悪性度骨腫瘍では化学療法が必須となる.化学療法の副作用には,悪心,嘔吐,下痢,腹痛,発熱,食欲不振などの即時型副作用(投与後24時間以内),白血球・血小板減少(骨髄抑制),口内炎,肝機能障害などの早期型副作用(投与後数日から2週間以内),さらに難聴,神経障害,間質性肺炎,難治性肝機能障害など遅延型副作用(投与後4週間以上経過後)がある3).これらの副作用が理学療法の阻害因子となることが多く,廃用性(二次性)筋力障害の原因となるため十分に留意しなければならない.
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