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はじめに
閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans:ASO)は下肢のしびれや冷感,間歇性跛行(intermittent claudication:IC)から足趾潰瘍・壊死に至る重症虚血肢(critical limb ischemia:CLI)まで多彩な障害像を呈し,移動動作能力を主体とした日常生活活動(ADL)や生活の質(QOL)を低下させる機能的疾患である.ASOの臨床症状は下肢動脈の虚血程度によって異なり,閉塞,狭窄などの血管病変と側副血行路の発達の程度のバランスによって,無症候性から症候性の相違が生じる.ASOの重症度分類として,Fontaine分類やRutherford分類がよく用いられている(表1)1,2).また,IC患者の5年生存率は75%,CLI患者においては40%まで低下するとされており3),生命予後が不良な疾患である.
ASOを含む末梢動脈疾患(peripheral arterial diseases:PAD)の統一治療ガイドラインとしてTrans Atlantic Inter-Society Consensus(TASC)やTASCⅡ3)があり,その中で運動療法は初期治療の一環として推奨(グレードA)されている.本邦では2006年に心大血管疾患リハビリテーションとしてICを呈するASO患者への運動療法が保険適応となり,ASO患者に対する運動療法の重要性が認識されるようになった.ASO患者に対する運動療法の効果として①歩行距離の増加,②QOLの改善,③対費用効果,④生命予後改善が挙げられ,その効果が期待されている.
しかし,入院期間の短縮化や実際の実施要領の不明確さなどもあり,ASOに対する運動療法は全国でも数える程の施設でしか施行されておらず4),普及は極めて遅々としている.加えて,下肢血行再建術後の理学療法についての報告は少なく,担当療法士の判断で理学療法が行われているのが現状である.本稿では,ASOに対する下肢バイパス術後の理学療法について解説する.
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