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はじめに
臨床実習では,学生のコミュニケーション能力の拙劣さが大きな問題となることがあり,程度によっては実習が中止になってしまうこともある.
実習施設の多くが「基本的なコミュニケーション能力は見学実習や評価実習の中ですでに獲得されている」と考えている.理学療法士としての基本的な資質に問題がある学生を,学校側が総合実習に送り出すはずがない,という認識も存在する.
しかし,「コミュニケーション能力」という言葉は,どの実習施設・学校でも同じニュアンスで使用されているわけではない.明確な定義や共通の評価指標などはなく,その言葉のうちに求めるものが「話し言葉の使い方」にとどまる施設もあれば,「対象者との信頼関係の構築」まで求める施設もある.
一口にコミュニケーション能力と言っても見学実習で求められる能力,評価実習で求められる能力,総合実習で求められる能力はそれぞれ異なり,相手が対象者なのか指導者なのかによっても変わってくる.まして「うつ」「認知症」「せん妄」など,様々な臨床症状を有する対象者と接する場合,医療従事者として求められる対応も様々に異なるため,事前に十分な知識を得ておく必要もあり,より高度なコミュニケーション能力が求められる.
それでは,実習にあたって必要な「コミュニケーション能力」とはどのようなもので,何を心がければよいのだろう.
本稿では,見学・評価・総合実習各々で求められるコミュニケーション能力についておおまかに紹介し,その主なものとして「言葉使い」「傾聴」「文書能力」について,実習で求められるレベルを提示した.また,「対象者」「実習指導者」別に実践的な接し方についてより具体的な解説を加えた.最後に,実習指導者向けに,学生のコミュニケーション能力の評価にあたって実際に当院で使用している方法を紹介した.問題点を確認し,ぜひ,各施設で学生の評価方法を検討してほしい.
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