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はじめに
表面筋電図(以下,筋電図)は,体表から測定可能な筋内の電気信号を記録したものであり,従来はシールドルーム内で,主に診断目的で計測が行われていた.しかし近年では,その電気信号をman-machine interfaceとして利用することで,幅広い分野で活用されている.
リハビリテーション分野においては,切断者に対しての筋電義手,筋電義足の制御,また,四肢麻痺患者に対しては情報伝達機器や車いすの入力デバイス(筋電スイッチやマウス,ジョイスティックなど)で用いられている.さらに介護者に対するパワーアシストロボットなど,その応用範囲は多岐にわたる.一方で,理学療法分野,特に物理療法においては,筋電図はバイオフィードバック療法(以下,BF)で用いられる以外には,その使用は限られていた.
また,機能的電気刺激(functional electrical stimulation:以下,FES)や治療的電気刺激(therapeutic electrical stimulation:以下,TES)は,脊髄損傷患者や脳卒中患者などを対象として,機能代償や治療として用いられている.この最大振幅100Vにも達する電気刺激中に,1mVにも満たない随意筋電図を記録することは,電気刺激により発生する巨大なアーチファクトのため困難であった.そのため,筋電図を用いた電気刺激装置は,電気刺激が開始される前に筋電図信号をトリガーとして電気刺激を行うものが主流であった.
しかし近年,電気刺激を印加している電極から随意筋電図を記録する手法1,2)が開発され,さらに,その技術を応用し,随意筋電図によって電気刺激を制御する携帯可能な新しい電気刺激装置が開発され3),市販されている.本講座では,筋電図による電気刺激制御を可能とした新しい電気刺激装置の概要,および適応,使用方法,効果などについて解説する.
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