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はじめに
訪問リハビリテーション,通所リハビリテーションなど,地域において理学療法士が関わる「リハビリテーション(以下,リハビリ)」という名称のつく事業は,医療機関に限らず,施設,行政など多岐にわたっている.障害をもった人たちの「生活」の場として自宅か施設かという違いはあるが,施設においてもそれぞれの特徴や役割を果たしつつ,当事者の「生活の再構築」を目指し活動しているという点では共通している.地域で理学療法を提供するにあたって必要なことは,制度面などの整備とともに,われわれが当事者とどれだけ向き合えるかということではないかと考える.
最近は,在宅を「維持期」とする捉え方を変えることも検討されているが,まだ明確な変更には至っていない.長期にわたり在宅で生活する人にとって,「維持」という位置づけで生活に張りがもてるだろうか.高齢になると状態を維持するのが精一杯という人もいるが,その根底には「何とか迷惑をかけないで暮らしたい」という気持ちが隠れているように思う.関わるわれわれも,「維持期」としてではなく「変化,改善する」という視点で関わる必要がある.われわれの生活も変化があることで張りが出るように,障害がある人にとっても,楽しみや役割をもち自信を徐々に回復していくことで,生活に張りがもてるようになると考える.地域での様々な関わりによって,その人が変わっていく様子を目の当たりにし,驚きやその瞬間の喜びを共有し,それまでのプロセスに関われるということが,在宅支援の醍醐味であるように思う.
理学療法士にとって,生活に密着する支援を進めるなかで,他機関・多職種との連携,制度の理解に加えて,在宅における当事者の心理の理解,家族への支援などに配慮し,当事者の主体性の再獲得に向けた支援を行うことが重要となる.本稿では,これらのことについて実践のなかから考え,述べてみたい.そして,生活の再構築を地域で支援する者として,どのような視点が必要であるか,これから地域で理学療法を行う理学療法士にとって1つの指標となれば幸いである.
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