特集 がん治療における理学療法の可能性と課題
がんの理学療法の現場から
2.リハビリテーションとしてのリンパ浮腫対応―今後の役割と課題
吉原 広和
1
Yoshihara Hirokazu
1
1埼玉県立がんセンターリハビリテーション室
pp.949-954
発行日 2008年11月15日
Published Date 2008/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551101292
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リンパ浮腫を取り巻く状況
二次性リンパ浮腫とは,がんの手術後や放射線治療後に起こる,リンパ経路の障害や損傷,閉塞によりもたらされる浮腫のことである.適切な管理と予防を必要とし,進行・重症化すると自然治癒することはない,重篤ながん術後後遺症である(図1).古い統計ではあるが,厚生省(現厚生労働省)による1988年の実態調査では,リンパ浮腫の患者について2,300人程度と報告されている1,2).それ以後の公式な調査結果が存在しないため,現在の正確な患者数は把握されていないが,潜在的に10万人以上存在すると考えられている.また,北村3)による乳がん術後患者を対象とした2007年の調査では,術後の乳がん患者におけるリンパ浮腫の発生率は54%と報告しており,術後の対応が非常に重要であることを示唆している.
リンパ浮腫に対する医療者側の認識が高まったきっかけは,2001年に浜松で行われた日本リンパ学会でのサテライトシンポジウムであり4),この後,セラピストの養成や各種講習会の開催,リンパ浮腫の啓発活動に拍車がかかったといえる.その後,今日までの7年間で,リンパ浮腫への対応は様々な職種によって取り組まれるようになってきたが,現在でも,全体的な評価を行える専門セラピストの総数はごくわずかであり,十分な治療環境が整った状態ではない.リンパ浮腫に関わる医療職種は様々であるが,なかでも病院内の取り組みにおける看護師の活躍が現在最も際立っている.
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