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はじめに
リンパ浮腫は一旦発症すると完治が難しい疾患である.慢性化すると簡単には改善せず,医療者,患者ともに積極的な治療をあきらめ,さらに重症化する症例もみられる.
がん治療後に発症する続発性症例はリンパ浮腫全体の80%以上を占め,そのなかでも乳癌,子宮癌など女性特有のがんが原因になることが多く,ボディイメージの変化やADL(activities of daily living)の低下などによりQOL(quality of life)が悪化するため,がんを克服した患者にとって非常に悩ましい疾患と言える.また,担癌状態で長期間経過する症例や,緩和ケアを受ける状態になった症例でも浮腫が原因となり,QOLが低下することが多い.
しかし,発症早期に診断して適切に保存的治療を行うことによってその進行を防ぎ,患者自身がセルフケアできるように指導することでリンパ浮腫とうまく付き合うことができる.例えれば,糖尿病などの生活習慣病患者に食事・運動療法を指導することと同じである.
患者に治療法を指導するためには,医療者側がリンパ浮腫に対する知識や病態・治療法を身につけていることが必須であるが,精通している医師は少ない.国際リンパ学会で取り上げられている主な保存的治療1)を表1に示したが,その中心は30年以上前に確立された複合的理学療法(complex/combined physical therapy;CPT)である.世界的にはリンパ浮腫に対する標準治療であるが,残念ながら日本ではまだ十分に普及していない.大部分の医療従事者にとって,弾性着衣や空気波動型マッサージ器などの簡単な治療だけでは改善しにくいリンパ浮腫は,「治らないどうしようもない術後後遺症」というイメージが強いと言える.
本稿ではリンパ浮腫治療の考え方やCPTを中心とした保存的治療について解説する.
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