特集 身体と環境
発達障害における身体と環境
久保 雅義
1
Kubo Masayoshi
1
1ミシガン大学身体運動学講座
pp.871-877
発行日 2003年10月1日
Published Date 2003/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100901
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「発達障害」には「運動」,「認知」,「感情/情緒」さらに「言語」の障害など幅広い領域が含まれ,かつそれらがお互いに影響を及ぼしながら同時に別々の速度で変化をしていくため,一つの要素だけを個別に取り上げて評価し介入していくということは,実際に子供たちに接する最前線ではあり得ないことですが,今回は特に理学療法の領域で関連が深いと考えられる「運動」に焦点を当てて考えていきたいと思います.特に,運動発達障害の理解には,運動発達そのものの理解が大前提ですので,本小論では「発達に伴い観察される運動パターンの変化」と「環境」のかかわりについての理論的な背景から始め,最後に理学療法的介入を考えるにあたってのヒントとなると思われる一つの例をあげています.
「運動」とは何か
まず,「運動」というものを純粋に運動学的にとらえると,時間の経過に伴う四肢および体幹のジオメトリーの変化であって,そのメカニズムはニュートン力学で支配される物理で十分にカバーされています.その意味では人間の運動と,例えば歩行ロボットアシモ(http://www.honda.co.jp/ASIMO/)の運動の間にはいささかの違いもありません.質点や剛体の質量と大きさなどの物理的特性とそれにかかわる力の総和,そして運動方程式がすべての面倒をみてくれます.整形外科の領域などでは,このような意味での「運動」の理解が大きな意味を持つでしょう.
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