入門講座 理学療法ワンポイントアドバイス➎
呼吸障害―急性期
石川 朗
1
Ishikawa Akira
1
1札幌医科大学保健医療学部理学療法学科
pp.411-414
発行日 2003年5月1日
Published Date 2003/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100813
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呼吸不全において,急性期の明確な定義はない.1983年厚生省特定疾患呼吸不全調査班によると1),呼吸不全とは呼吸機能障害のために動脈血ガス(特にO2とCO2)が異常値を示し,そのために正常な機能を営むことができない状態としている(表1).その具体的基準は,室内空気呼吸時のPaO2が60Torr以下となる呼吸器系の機能障害,またはそれに相当する状態を呼吸不全とし,加えてPaCO2が45Torr未満をⅠ型呼吸不全,45Torr以上をⅡ型呼吸不全としている.また,慢性呼吸不全とは,呼吸不全の状態が少なくとも1か月以上続くものとしているが,1か月未満を急性呼吸不全とは定義付けていない.
1.急性呼吸不全
急性呼吸不全は呼吸不全が急速に生じただけではなく,生命を維持するだけの換気能力と酸素化能力が障害された状態である.急性呼吸不全においては代謝性アルカローシスの代償としてのPaCO2の貯留や高濃度の酸素投与における低酸素血症の改善の程度が反映していない.そのため,1 PaCO245~55Torr以上で,pH7.35以下の酸血症(acidemia)を伴い,2 酸素吸入濃度を60%以上に保っても,PaO260TorrまたはSaO290%未満を急性呼吸不全の指標としている2).
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