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Ⅰ.はじめに
人工呼吸器による呼吸管理を受けている症例を初めて担当するとき,戸惑いを感じた人は多いと思われ,まだその経験のない人にとって人工呼吸器は特殊な機器と思われるかもしれない.実際に筆者自身もそうであった.更に,人工呼吸器に関する書物を読むと,略語の理解に難渋し,臨床での設定モードの意味について十分に理解するのは容易でない.
人工呼吸器の歴史は,ポリオに対し考案された陰圧式人工呼吸器,いわゆる鉄の肺に始まり,続いて陽圧式換気法の導入と術後呼吸管理への応用,更に酸素化不全に対する種々のモードや換気法の開発へと発展してきた.その対象は術後の呼吸管理,成人呼吸窮迫症候群(adult respiratory distress syndrome:ARDS),集中治療室(ICU)における外傷や熱傷症例,神経筋疾患などが代表的なものとして挙げられるが,陳旧性肺結核等のⅡ型呼吸不全や睡眠時無呼吸症候群などにも適応されている.
近年,人工呼吸器管理下にある症例の呼吸管理として理学療法が導入される機会が増えつつある.その理由は,第1にICUにおいて理学療法士が関与できる施設が多くなったこと,第2に非侵襲的陽圧換気(noninvasive positive pressure ventilation;NPPV)の進歩により在宅人工呼吸療法(home mechanical ventilation;HMV)が盛んに行われるようになったからである.これからも,そうした機会は更に増えるものと予想される.本稿では,人工呼吸器管理下にある患者の理学療法の経験が少ない理学療法士を対象に,人工呼吸器の構造や使用法の基礎について説明する.
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