特集 理学療法における運動療法と装具療法の融合
脳卒中片麻痺の治療を目的とした装具使用の実際
宮嶋 武
1
Miyazima Takeshi
1
1安曇野赤十字病院 リハビリテーション科
pp.823-830
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100669
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
「脳卒中治療ガイドライン2004」は,急性期の廃用症候群防止や,早期から起座・起立・歩行を含む積極的なリハビリテーションの施行が重要であることを提示し,特に歩行に関しては早期から装具を用いて行うことも推奨した1).脳血管障害(以下,脳卒中)患者の早期リハビリテーションが普及することによって,装具の使用法や使用時期,あるいは考え方も図1に示すように徐々に変容している.急性期の脳損傷患者に対して早期起立・歩行を行う概念がなかった時代は,歩行獲得が円滑に進行しない患者に対し,最終段階で個人用の装具を作成して用いる傾向が強かった.しかし,早期起立・歩行の適応が可能であることが判明してからは,起立・歩行などの動作の早期獲得の手段として,急性期からも装具が用いられるようになった.特に重度意識障害や重度麻痺を伴う患者は,早期起立・歩行練習時において装具は必需品となっている.その一方で,廃用症候群に関する知識不足や装具使用に関する誤った概念,あるいは早期からの起立・歩行の経験不足などが原因で,治療手段として装具を用いる早期起立・歩行練習の実施をためらう傾向も生じている.当院においては,15年以上前から練習用装具を用いた早期起立・歩行に取り組み,急性期からの治療を目的とした装具の検討を行っている2,3).
本稿では,脳卒中患者の装具適用に関して,装具に関する誤った概念を是正するとともに,当院で使用している長下肢装具(以下,KAFO)や短下肢装具(以下,AFO)の使用方法・時期について,また廃用症候群予防の重要性についても述べる.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.