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全身性エリテマトーデス(以下SLE)は全身を侵す炎症性疾患で,中枢神経系も侵され種々の麻痺症状を呈することが少なくない1).リハビリテーションを実施するうえでは,脳卒中による麻痺と違って症状が不安定であるという阻害因子が加わる難しさがある.今回,右片麻痺を呈したSLE患者に対し運動療法を行う機会を得,歩行障害に着目して社会復帰に向けた実用的な歩行能力の獲得を目的として認知運動療法を試行したのでその経過を報告する.
症例提示
30歳,女性.平成15年6月12日,胃腸炎にて他院入院中,めまいと右半身のしびれ感,脱力を自覚し,歩行障害も出現した.頭部MRI(磁気共鳴画像)の結果,明らかな病変はみられなかったが,同日には右片麻痺が出現していた.脳スペクトの結果では血流の低下が認められたことなどから,中枢神経系ループスと診断された.SLEに対する急性期治療により全身状態が落ち着いたため,リハビリテーション目的で平成15年8月25日当院に転院した.転院時の運動機能テストの結果は,上肢Brunnstrom Stage(以下BRS);Ⅴ,下肢BRS;Ⅲであった.足部のクローヌスは簡単・著明に出現していた.車椅子への移乗は自立,平行棒の中での歩行は可能であったが,その歩容をみると麻痺側のtoe offは全くみられず,骨盤を挙上・前方回旋させて,足部を外側へ振り回していた(図1).ときには,足部を床に引っ掛けたり,過度な足部の内反で着地するため足部に痛みを引き起こした.右下肢全体,特に足部にしびれ感を訴えており,感覚障害は強く,足部において特に重度であった.右下肢の感覚障害や足クローヌスは今回の右片麻痺出現よりも以前に存在しており,チアノーゼやしびれ感などが足部,特に足指にみられていた.
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