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本研究は,完全脊髄損傷の患者に対し,損傷部位以下に痛みや反復的な刺激を与えることにより感覚を誘発し,感覚残存の脊髄損傷(SCI)の存在を明らかにする.対象は,Th10より上位の外傷性SCI患者24名.すべての患者は完全SCI(ASIA Grade A)であった.その内,11名の患者が中枢神経性の痛みを伴っていた.平均年齢39.8±9.5歳,受傷からの期間は平均16.8±7.4年であった.10名が頸髄損傷,14名が胸髄損傷であった.すべての患者は同じ検査者によって評価され,痙縮はAshworth Scaleと腱反射により評価した.感覚評価は,膝下10cm前外側部位にて行われ,測定肢位は車いす座位もしくは背臥位にて行った.感覚検査には,触覚,振動覚,温度覚,圧痛,皮膚を摘むを用いた.被験者は熱感,冷感,疼痛など知覚が変化した時,プッシュボタンを押すことにより示した.プッシュボタンを押せない被検者は口頭にて示した.体性感覚誘発電位は,15名の患者に施行し,後脛骨神経を3Hz,0.2msの短形波にて電気刺激した.刺激強度は運動反応が得られるまでとした.また,脊髄矢状面MRI T2強調(T2WI)を施行した.MRIを施行した15名の内,4名の患者において完全断裂が認められ,11名においては不完全様の所見が認められた.19名の完全SCIにおいて損傷レベル以下に加えられた刺激に対して感覚を呈した.感覚脱失領域において,12名の患者が局所的に感覚を呈した.MRIにて完全断裂が認められた4名では感覚脱失であった.完全断裂,感覚残存を呈したグループ間では中枢神経性の痛み強度は有意差がなかった.ほとんどの患者において,下肢に温度刺激を加えることによりスパズムを呈した.また,痛み刺激でも同様に認められた.痙縮評価は完全断列,感覚残存グループ間において差はなかった.これらの感覚所見から,感覚経路が残存しており,また,完全SCI患者に対し母趾への振動刺激により中心溝後部に活動が認められたことから,感覚残存SCIの存在が明らかとなった.
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