古典のページ
脊髄における知覚の伝導について—1849-1850
Brown-Séquard
,
萬年 甫
1
,
岩田 誠
1
1東京医科歯科大学第3解剖学教室
pp.220-225
発行日 1969年4月25日
Published Date 1969/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1431904601
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
解説
今回ここに訳出するBrown-Séquardの四つの論文は,今日われわれの耳に親しいBrown-Séquard症候群に関する実験的研究の報告である。いずれも1849年と1850年の2年間にパリの生物学会Societe de Biologieの席上で紹介され,ちようど1849年から刊行されることになつたComptes rendus de la Societe de Biologieに収録されたものである。
1849年といえば,Claude Bernardが動物の延髄で糖針刺の実験をしたり,隣国ドイツではPollenderが脾脱疽菌を発見した年にあたり,またその前年の1848年にはPasteurが酒石酸の光学異性体を発見したりして,生物学界にとつては実りゆたかな年月であつた1)。しかし神経学の領域はようやく近代の夜明けを迎えようとする時期で,形態学の方でも神経細胞の姿はおぼろげにしかとらえられておらず,神経細胞体と線維とは別々の細胞からつくられてのちに接合するというような説が通用していた頃である。近代神経学の父と称せられるCharcotは当時22歳でまだアンテルヌにもなつていないし,Babinskiのごときは生まれてもいなかつたという創生期以前の状態にあつた。
Copyright © 1969, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.