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はじめに
超高齢社会に入って,腰や下肢の疼痛やシビレ感,そして間欠跛行を訴える高齢者の腰部脊柱管狭窄症(以下,LCS)患者が増加している.菊地らは,圧迫される神経組織と神経組織を圧迫する周囲組織の解剖学的特徴は神経症状の発生に深く関与しているが,最も重要なのはこれら両者の相互関係であるとしている1).LCSの主症状の1つである間欠跛行は下肢の疼痛,シビレ感,知覚異常,脱力などが起立や歩行によって発生または増悪し,体位変換や前屈位での休息によって緩解する症状とされており,馬尾や神経根の慢性圧迫による器質的障害に,血流障害あるいは乏酸素状態による可逆的動的要因が加わって発生すると考えられている2).菊地は間欠跛行を馬尾型,神経根型,そして混合型に分類している(表1)1).この分類のためには安静時症状だけではなく,歩行負荷試験が不可欠であり,負荷によって新たに出てくる症状や他覚的所見を把握しなければならない.その上で神経根ブロックによって症状が消失するか否かを確認することが必要とされている3).
LCSの歩行練習では間欠跛行の改善が大きな目標であるが,高齢による老化,疼痛に起因した行動範囲の抑制による廃用,心理的な引きこもり現象など多彩な阻害因子がある.高橋は70歳未満のLCS患者の手術による歩行能力の平均改善率は75.4%で,70歳以上では52.8%と年齢的な影響を指摘している.そして,70歳以上の30例中3例(全例女性)が転倒によって骨折していたことも報告しており4),歩行練習に責任ある理学療法士として,歩行の確立だけではなく歩行の安全性に関心を払わねばならない.
今回,非常に多彩な症状を呈するLCSの歩行練習について記述するが,他覚症状だけではなく自覚症状も疾病の中心をなしており,当然歩行練習プログラムは個別的となる.
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