特集 歩行練習
低酸素脳症患者の歩行練習
尾谷 寛隆
1
Odani Hirotaka
1
1国立循環器病センターリハビリテーション部
pp.635-641
発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100367
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
低酸素脳症の成因と病態生理
脳は低酸素状態に極めて弱い臓器である.低酸素状態により引き起こされる様々な中枢神経症候を“低酸素脳症”と呼ぶ1).低酸素脳症の成因には,①脳血流低下によるもの(心停止など循環不全によるもの),②呼吸障害によるもの,③貧血によるもの,④細胞内の呼吸酵素系障害によるものなどがある(表1)2).
大脳皮質,海馬,小脳,大脳基底核などは低酸素状態に非常に脆弱な部位であるため,低酸素脳症ではこれらの部位が特に損傷されやすい.さらに循環不全に起因する脳血流の低下による低酸素脳症では,血行動態の違いにより損傷を受けやすい領域があり,大脳では前・中・後大脳動脈領域支配の分水嶺(watershed)である頭頂-後頭葉接合部や側頭-後頭葉接合部などがこれに相当する.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.