特集 歩行練習
著明な円背を伴う高齢者の歩行練習
峯 貴文
1
,
立花 孝
1
Mine Takafumi
1
1信原病院リハビリテーション科
pp.649-654
発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100369
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
高齢者を観察すると,背中を丸くして歩行する姿を多く見かける.その姿勢は円背と呼ばれ,①骨粗鬆症による脊柱変形,②腰背筋萎縮による筋力不全,③椎間板の変性といった脊柱支持組織の加齢変化や,農作業などの前屈中腰作業,畳生活といった長年の労働・生活環境などにより脊柱の後彎が拡大することによって起こる1).
円背の発生頻度は,若松の11.8%,有田の31%などの報告があり,高齢者に最も多い姿勢異常である2).円背姿勢での歩行を見ていると,ついつい「もっと胸を張って」と声をかけたくなってしまう人は多いのではないだろうか.確かに胸を張った姿勢のほうが見た目は良いかもしれないが,はたしてその人にとって適しているかは疑問である.
脊柱カーブの変化がもたらす影響は大きく,上下肢の関節アライメントを変化させ,姿勢の安定化を図っている.歩行は姿勢変化が周期的に連続して起こるものであるため,立位姿勢におけるアライメントの変化が歩行形態・歩行中の筋活動に及ぼす影響は大きい.したがって,身体的特徴を把握し,歩行能力を分析した上で理学療法を行うことが重要である.
本稿では,まず円背の身体的特徴とメカニズムを通して歩行に及ぼす影響について考える.次に円背患者の歩行能力の変化に対応した運動療法の進め方,および補助具選択について検討していく.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.