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はじめに
臨床実習において症例報告書の作成を課題とする理学療法士養成校は多いものと思われる.一般に症例報告書はケースレポートやケースサマリーとしてまとめられる.また,時期によって初期・中間・最終評価時報告書とも呼ばれる.本稿ではこれらを総称して「症例報告書」として扱うこととする.症例報告書の作成を臨床実習に課すことの主な目的は,症例の把握や実施した理学療法を客観的に点検・評価すること,実習を通して体験的に学んだ総合的な知識等を記述するという作業により確実な知識とすること,症例や実施した理学療法の内容を正確・簡潔に第三者に理解できるように表現するとともに記録する方法を学ぶことなどが挙げられる1).つまり,症例報告書を作成するということは,理学療法士になるための登竜門といっても過言ではない.また科学的根拠に基づく理学療法(evidence-based physical therapy;EBPT)という観点から見れば,その基礎を構築するための大切な作業とも言えるのではないだろうか.
世界保健機関(WHO)が2001年に採択した国際生活機能分類(国際障害分類改訂版:international classification of functioning, disability and health;ICF)は,従来の国際障害分類(international classification of impairments, disabilities, and handicaps;ICIDH, 1980年)において指摘されてきた種々の反省を踏まえ提起されたもので,今日のリハビリテーション実践において急速に普及してきている.従来のICIDHは,臨床実践において職種を越えた共通の障害概念を提起するものであった.理学療法士教育においても,障害像の理解に寄与する考え方として積極的に導入が試みられ,臨床実習の際に重要な課題となる症例報告書においても本モデルに従い障害像を整理することが指導されてきた.新たに提起されたICFが普及しつつある今日,改めて障害モデルを基礎に症例報告書を作成することの意義,ならびにICFを基礎にする上で従来のICIDHとの相違点を整理し,症例報告書のまとめ方にどのように反映させていくかを明確にすることが必要と考える.
以上のことを踏まえ本稿では,症例報告書にICFの概念を取り入れることの意義,ならびに具体的な応用方法について私見を述べていきたい.
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