講座 基礎理学療法学研究方法論・3
ヒトを対象とした基礎理学療法学研究方法論
松尾 善美
1
Matsuo Yoshimi
1
1神戸学院大学総合リハビリテーション学部医療リハビリテーション学科理学療法学専攻
pp.1093-1099
発行日 2005年12月1日
Published Date 2005/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100225
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はじめに
ヒトを対象とした基礎理学療法学研究は,基礎医学を含む幅広い基礎学問に基づいて実施される必要がある.健常者の運動学・運動生理学に関連した分野では,狭義の運動学(kinematics),運動力学(kinetics)に加え,神経生理学,運動生理学などに分類できる.
神経系理学療法では,古くは下等動物の制御機構や臨床観察を出発点にし,集積されてきた経験に基づいて組み立てられた運動発達学や運動制御,運動学習,認知再教育などによって神経学的障害を解釈し,これまでアプローチを行ってきた.図1は,Umphredが1990年に示した図を改変したものであり,神経系理学療法の基礎となっている基礎科学と1970~80年代までの発展およびその後の未来を示している1).われわれ理学療法士は,これまでどのように基礎理学療法学の学問構築を行ってきたのであろうか? 理学療法の発展には,基礎理学療法学の発展が必要不可欠であり,経験則を基にした理学療法だけではなく,理学療法介入のアウトカム研究とともに動物実験,電気生理学あるいは画像所見などによる基礎理学療法学の最新の成果に基づく臨床介入の発展性が問われている.本稿では,筆者がこれまで他研究者とともに関わってきた計算理論による運動制御について,生体の運動モデル研究の内容を紹介しながら,基礎理学療法学研究方法論を紐解いて行きたい.
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