特集 精神障害者の理学療法
精神障害者の生活体力へのアプローチ
田村 文彦
1
,
鶴見 隆正
2
Tamura Fumihiko
1
1CAC医療技術専門学校作業療法学科
2神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部リハビリテーション学科理学療法学専攻
pp.957-960
発行日 2005年11月1日
Published Date 2005/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100199
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医学や医療は格段の技術的進歩を遂げたが,その代償として慢性疾患と障害の管理という新たな課題を抱えるようになった.山根1)は,「命の贈り物といわれた移植,再生,遺伝子治療などの先進医療の発展により,救命・延命,治癒が重要な目的であった時代から,いかに望ましい状態で人生を過ごすことができるのか,『生活の質と時間(Quantity and quality of life)』を疾病と治療の結果として考えなければならない時代を迎えている」と述べているが,実は精神障害者に対するリハビリテーションを実施していくうえで不可欠な視点がここにある.
わが国の精神科領域における理学療法実践の報告は,脊髄損傷や切断などの合併症を有する自殺企図者への関わりや,精神病院入院者の高齢化に伴う脳卒中や大腿骨頸部骨折,寝たきりに起因する拘縮をはじめとする廃用症候群の改善を目的とするものが多い2).理学療法の各種手段は,身体に働きかけることで精神症状を改善する可能性を秘めていることは想像に難くないが,これが可能になる前提は,奈良3)が指摘しているように,「対象者のいかんを問わず,適切な身体運動を定期的に行うことの重要性はすでに常識的であり,精神疾患を有する患者にとっても例外ではなく,これらのプログラムを積極的に励行することの有用性は大きい」ということ,つまり「ヘルスプロモーション」としてのアプローチ方法を考えることが基本となる.
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