特集 産業医学最近の話題
労働者の体力
大西 徳明
1
Noriaki ONISHI
1
1労働科学研究所 労働生理・心理学研究部
pp.382-385
発行日 1988年6月15日
Published Date 1988/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207699
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■はじめに
労働能力は加齢的な機能変成の経過においても安定的に保有されていなければならないといえる.八木は職業体質論の社会衛生学的意義についてのなかで,「職業が特に近代的な産業組織化において,人体保健上,様々の危害を包蔵している.それは半ば強制的作業,夜業昼眠,環境不良,持続的強制姿勢,局部的労作,絶えざる心身の緊張,栄養不足,自由なる戸外運動の不足などが発育発達の劣弱を来し,早期体力の消耗,平均寿命の短縮となって現れる」ことを指摘している.
作業方法の機械化は,作業形態を著しく変貌させているといえる.かつてエネルギー代謝率の高い作業では,体力的側面が作業能力として評価される対応が直接的であった.しかし頭脳労働化したなかでの体力は,作業能力との結びつきが希薄となり,"基礎的体力"などといわれることにもなる.つまり,生活様式を含めた労働生活の変化は,かつてのような体力レベルを必要としなくなったことは事実である.が,また作業の継続を可能にする体力レベルや,加齢的な機能後退を考慮して体力レベルがいかようにあるべきかについて,曖昧にしている.
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