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はじめに
今日のわが国における急速な人口の高齢化は,これまでのがん,循環器病,糖尿病などのいわゆる生活習慣病中心の疾病構造から,痴呆症や寝たきり(日常生活動作の退行)などの老年期特有の病態へと移り変わる可能性がある.このような状況を踏まえ,これからの老人保健対策は単に疾病予防や疾病管理ではなく,高齢者の健康状態をできる限り良好に保ち,長期にわたり自立した生活を可能とすることが重要な課題と考えられる.
自立生活には身体的機能の維持が不可欠であり,それには生命維持に必要な生理機能から日常生活における動作能力(ADL)や手段的日常生活動作能力(IADL),さらには仕事や娯楽・スポーツなど,積極的な日常生活を営むまでの幅広い機能が対象となる.
これらの身体的機能の評価として,老年医学やリハビリテーション医学においては,ADL評価法を用いて生活動作の自立度や機能回復の評価判定が行われてきた.しかしながら,これらの尺度は日常生活動作が「できる」か「できない」かを判定するものであるために,比較的元気な高齢者への適用には限界があった.
一方,体力科学の分野では身体的機能を体力として捉えて,文部省の壮年体力テストあるいは最大作業能力テストなどが実施されてきた.これらの測定は身体機能を定量的かつ最大能力まで評価できる積極的尺度であり,青少年期から中高年期までの体力の推持を縦断的に観察することが可能である.しかし,測定の実施にあたっては測定動作の難易度が高いことや,測定時の身体的負担がきわめて大きいことから,対象者なる高齢者は比較的体力水準の高い者に限られることになりやすく,さらに,測定時における安全性の確保が困難であることが指摘されている.
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