原著
年代別にみた立位姿勢バランス能力と足底二点識別覚の変化過程
森岡 周
1
,
宮本 謙三
2
,
竹林 秀晃
2
,
八木 文雄
3
Shu Morioka
1
1畿央大学健康科学部理学療法学科
2土佐リハビリテーションカレッジ理学療法学科
3高知大学医学部神経統御学講座認知・行動神経科学教室
キーワード:
片脚立位
,
発達
,
退行
,
二点識別覚
Keyword:
片脚立位
,
発達
,
退行
,
二点識別覚
pp.919-926
発行日 2005年10月1日
Published Date 2005/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551100190
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一般に立位姿勢バランスは,7~10歳1,2)あるいは9~12歳3,4)で成人と同等の制御能を獲得すると言われている.この理由としては,7歳以降になると姿勢制御のための求心性感覚情報を適切に統合することが可能となり5),成人と同じ立位姿勢の制御戦略が獲得されるためではないかと考えられている1).Foudriatら6)は3歳までは視覚優位な立位姿勢制御であるが,その後徐々に体性感覚優位の制御となり,6歳過ぎには成人と同様の体性感覚優位の姿勢制御へと変化することを明らかにしている.これらの研究からは,立位姿勢バランスの発達は,学童期前半にある程度完成するというのが一致した見解といえる.さらに,森岡7)は開眼片脚立位保持能力が幼児期後半から学童期前半にかけて急激に向上し,学童期後半になるとその伸びは少なくなることを報告している.この中では,片脚立位保持時間は直線的に発達するのではなく,ある年齢から急激に発達していく非線形パターンであることが示されている.
一方,立位姿勢バランスの退行過程では,発達期における視覚優位から体性感覚優位への姿勢制御戦略の変化とは正反対の変化が報告されている8~11).これは,体性感覚情報が極端に減少した条件下では,高齢者は立位姿勢バランスの安定性を維持することが難しく,視覚への依存度が高くなるというものである12,13).すなわち退行過程では,体性感覚優位な姿勢バランス戦略から視覚優位な姿勢バランス戦略へと逆戻りする傾向にある.そして,年齢と片脚立位保持時間においては直線的な負の相関が示されており14),加齢と共に片脚立位保持時間の退行が認められている15).
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