特集 動物の行動機能テスト―個体レベルと分子レベルを結ぶ
7.昆虫
ミツバチ・コオロギなど
形の識別能力テスト
三村 珪一
1
1長崎大学
pp.574-575
発行日 1994年10月15日
Published Date 1994/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900840
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目標
昆虫の種類はきわめて多いが,そのうち実際に視覚パターンを識別しうることがわかっている昆虫はそう多くはない。また,形を識別しうることが推測されているにしても,どのような形を識別しうるかが完全に解明されているとは限らない。一般に,動物にとっての感覚能力は,その動物が生存してゆくために必要な情報が受容しうるように発達している。したがって,その種類の多様性を考えれば,昆虫の形の識別に関する研究はその緒に着いたばかりといえるであろう。本テストの目標は,ある昆虫が形の識別を可能とするか,可能とするならばどのような形を識別できるのかを知る方法を述べることである。
基本的には彼らの行動を解析することにより形の識別を推測するという方法をとる。具体的には,昆虫に備わった特異的な行動能力を利用したテスト法であるといえる。昆虫の場合,その種の多様性に伴い,形の識別も多様化するので,飛ぶ昆虫・歩く昆虫・はう昆虫などすべての昆虫に一様な方法を適用することはできない。当然,調べる対象となる昆虫の習性や目の特性などを考慮したうえで,それ相応の工夫がなされなければならない。また,行動解析以外の諸方法の裏づけも当然必要である。利用できる行動としては,光(形)を刺激として用いた条件反応,光に基づく反射,光走性などが考えられる。
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