Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
本研究の目的は,足部アラインメントを変化させた片脚立位で非支持脚の股関節運動を行うことで,姿勢保持するための補償的な骨盤肢位が変化することを数値化して明らかにすることである.
われわれは,患者の実生活上の困難な動作を,簡単な基本動作に置き換えて,その基本動作を観察,分析することで,機能障害を探索している.その評価として,われわれは動作分析をもとに静的および動的な片脚立位姿勢を分析することに着目している.なぜなら,片脚立位という姿勢は,一側下肢で身体を支持することと解釈すると,日常生活で毎日のように行われている.そのうえ,歩行動作を遂行している健常者のなかでも片脚立位を上手に保持できるものは少なく,片脚立位を観察することは,理学療法評価のみならずスポーツ障害に関連する評価においても重要であると考えられる.また,片脚立位は理学療法で歩行動作の前段階を練習する場面においてもよく用いられており,日常生活動作を自立させるために重要な姿勢の一つであるからである.
片脚立位は,一側の足部の真上に身体重心を位置させ,下肢・骨盤・体幹・頭部・上肢という身体体節を保持している.言い換えれば,片脚立位においては支持脚足部のアラインメント変化や可動性の違いが,骨盤を介して身体近位体節に大きく影響すると考えられる.骨盤には体幹や頭部を載せるテーブルのような役割がある.2本足で立つようになった人間は,直立位で骨盤を水平位に保持して頭部や体幹上部を傾かないようにしなければならない.また,片脚立位姿勢を保持した状態で,自動的に上下肢の運動を行うことは,片脚立位でバランスを崩す要因となり,骨盤を水平位に保持できず,それを補償するために骨盤肢位が変化するのではないかと考えられる.したがって,片脚立位で骨盤肢位を観察することは,動作能力を把握するポイントとして臨床的意義が大きいと考えている.臨床において,足部可動性の低下している場合や過度な踵骨外反位を呈している場合には,片脚立位で骨盤肢位が非対称になり,その骨盤非対称性は非支持脚や両上肢を自動的に運動することでより顕著になることを経験する.
これまで踵骨外反角度の増加が身体運動に影響を及ぼすことは報告されているが1-4),明確に骨盤運動について数値化して報告しているものはない.
そこで本研究では,片脚立位における支持脚足部アラインメント変化に加えて,非支持脚の股関節屈曲角度を変化させた場合の骨盤肢位と支持脚の筋活動について,三次元動作解析と表面筋電図を用いて検討した.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.