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脳性麻痺児の摂食・嚥下機能障害に対する理学療法
小児にとって摂食とは,生命維持および成長・発達に必要な栄養摂取として欠かせないだけでなく,哺乳や食事を通して母子関係を緊密にし,大人と子どもの間での相互関係が信頼を育て,広く社会性を発達させる出発点である.また空腹感を満たし,視覚・嗅覚・味覚による楽しみを享受することで,精神的・情緒的満足を得られる機会でもある.脳性麻痺児にとっては,本来楽しいはずの食事場面も,嚥下困難・嘔吐・窒息など様々な困難を余儀なくされる.危険性が高い場合は食事そのものを禁止されて経管栄養に至る例も多く,摂食・嚥下機能障害に対する取り組みの必要性はますます大きくなってきている.
脳性麻痺児の示す摂食・嚥下機能障害の問題点は,年齢・障害の程度によって医学的側面から社会的側面まで様々であるが,脳性麻痺児の摂食・嚥下機能障害に対するアプローチは,実際の食事場面を作れない児に対する経口摂取前段階(pre-oral stage)が呼吸との協調性の中で重要であり,理学療法士の介入が望まれる.早期より理学療法士が摂食・嚥下機能障害に関わる意義として,①摂食・嚥下機能の準備として,また誤嚥に伴う呼吸不全状態に対応して,呼吸理学療法の実施が可能なこと,②全身的リラクセーションや姿勢コントロールが容易なこと,③全身的運動発達の一部としての摂食・嚥下機能への発達援助が可能なこと,などが挙げられる.特に重症脳性麻痺児においては,食事場面における安全な嚥下能力の改善とともに,日常生活場面での唾液嚥下能力の維持を基にした呼吸管理は,全身状態に大きく影響を与え,摂食・嚥下機能障害へのアプローチの最終的な目標ともなる.
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