プログレス
摂食嚥下治療―運動機能障害へのアプローチ
長谷川 和子
1
1諏訪赤十字病院リハビリテーション科
pp.822-824
発行日 2000年11月15日
Published Date 2000/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105668
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1.はじめに
1995年第1回の日本摂食嚥下リハビリテーション研究会が開かれ,今年は第6回(学会に変更)を数える,この間の摂食嚥下治療の発展には目覚しいものがある,これほど基本的な生存や楽しみに関わる機能でありながら数年前まで一般に注目されなかったのはむしろ不思議なほどで,目の前にありながら自らの既得の知識の範囲を越えて物事を見ることの難しさを改めて思い知らされる.
摂食嚥下治療は,この数年の積み重ねで,必要な観点や基本的な治療方法を提示する啓蒙的な段階から,個々の障害像に即して問題を解決してゆくための方法を模索する段階に入ったといえよう.
評価では,嚥下造影(VF)検査が誤嚥の有無だけではなく,摂取量や姿勢を変化させた場合の効果を診る治療的評価として行われるようになった.また,内視鏡検査で直接咽喉頭の形態や唾液の喉頭流入の様子を観察することも行われている.これらは誤嚥を防ぐための条件を可視的に検索することをある程度可能にした.
嚥下食についても,誤嚥しにくい食物という代償的な観点に,機能改善を促す食物の物性やその段階づけという治療的観点が加わってきた.リハビリだけでは解決しない障害に対する手術実施件数の増大も報告されている.
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