特集 嚥下障害/熱傷
脳性麻痺児の摂食嚥下指導の実践
多田 智美
1
,
金子 満寛
2
,
梅村 敏美
2
Tada Tomomi
1
1三重県立養護学校北勢きらら学園
2愛知県心身障害者コロニー中央病院
pp.244-248
発行日 1999年4月15日
Published Date 1999/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551105280
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1.はじめに
脳性麻痺(以下CP)児の嚥下機能は,異常筋緊張による正常口腔運動パターンの未獲得はもちろん,全身の運動に大きく影響されるものである.更に,摂食嚥下運動は触圧覚を中心とした感覚刺激に対して引き出される“食べる目的にあった全身の協調運動”であり,生後,感覚-運動体験により獲得される1)といわれている.そこで,CP児の嚥下障害を口腔機能のみの問題として捉えるのではなく,全身運動の流れの一部としての摂食嚥下障害(以下,摂食障害)として評価・治療する必要がある2).
CP児の摂食障害は「感覚-運動障害」であり,口腔器官およびそれ以外に,より適切な感覚-運動を経験させることで全身の協調運動を引き出していくことも治療として重要になってくる.したがって,我々理学療法士(以下PT)は,全身的な感覚-運動発達を促すためにも,摂食嚥下指導に積極的に関わるべきである.また,指導の際にはいかに介助者に理解を促すかが,生活場面での効果継続のためには重要なポイントになってくる.
筆者の前勤務地である愛知県コロニー中央病院では,摂食機能障害を持つ子ども6名を1クール6回の摂食グループ訓練で実践的な指導を行い良好な成績を収めている3,4).グループ訓練では,PT以外にも作業療法士(以下OT),言語療法士(以下ST)と協力して評価・治療が行えるという利点や集団での指導が個別訓練とは違った効果を生みだしている.加えて,筆者は平成10年4月より養護学校に勤務し,教員と協力して指導を行っている.そこで,今までの摂食指導の取り組みのなかで筆者が得てきたことについて具体的な症例を通じて報告する.
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