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2002年に(社)大阪府理学療法士会障害児保健福祉部は,小児関連施設で治療を受けられている障害児(者)とそのご家族の方へのアンケート調査を実施した(http://www.physiotherapist-osk.or.jp/障害児保健福祉部 記録・報告のページ).その結果からは,①サービス利用者中心の治療,②在宅や地域での治療,③スタッフ間および施設間のコミュニケーションの向上が,今後理学療法士が取り組むべき問題であることが明らかになった.一番重要な「サービス利用者中心の治療」に関しては,小さい頃から理学療法治療を受けて成人になられた方から,現在の理学療法治療が「理学療法士のための理学療法」になっていることが多いという指摘があった.それは,理学療法室で子どもの運動パターンの改善にのみ注目し,子どもやご家族が家庭や学校や社会で直面する問題に注目しない理学療法治療を的確に表す言葉であった.脳性麻痺の理学療法の場合,「サービス利用者中心の理学療法」になるためには,まず子どもをご家族と一体と捉え,子どもと共にご家族へ援助を行うことが重要である.また,その障害が運動機能や知覚認知の障害であると捉える前に,家族や社会の中で生活するときに困難さを持つ生活障害であることを常に考え治療を行う必要がある.このような「子どもとご家族中心の理学療法」という考え方は,以下に述べる現在の世界の脳性麻痺の理学療法の流れと合致するものである.
本稿では,まず脳性麻痺の理学療法の歴史的流れを紹介し,現在私たちが子どもたちに提供している理学療法がどのように形付けられまた批判され,今後どのようにして「子どもとご家族中心の理学療法」を実現しようとしているのかについて私見を交えて紹介する.加えて,治療の基盤となる重要な理論と最新の評価方法と現在までに明らかになったいくつかのエビデンスを紹介する.
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