増刊号 誰でもわかる遺伝子検査
Ⅱ.各論—遺伝子検査はどういうときに必要なのか
3.応用編—遺伝子検査を利用する
3)遺伝性疾患
(8)酵素欠損症
須藤 加代子
1
1国際学院埼玉短期大学食物栄養科
pp.1127-1130
発行日 2002年9月15日
Published Date 2002/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906378
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はじめに
遺伝性疾患の多くはその酵素に異常がある.異常の中で酵素活性を失ったものが酵素欠損である.活性の欠損のみではなく,蛋白質の発現のない場合,さらに遺伝子レベルでの欠損までの酵素欠損を完全欠損といえるのかもしれない.しかし,従来から,遺伝子あるいは蛋白質が存在していても活性低下の場合に酵素欠損と表現されている.酵素異常が関与する疾患の病態は,ある原因(遺伝,環境,食生活など;大別すれば内因と外因に分けられる)が根底にあって,疾患に至るまで酵素,生成物,あるいは前駆物質,臨床症状というようにいくつかのレベルの関与が考えられ,かなり複雑である.
1つの酵素遺伝子の異常であっても,その異常の種類・程度により酵素活性の障害の程度が異なり,臨床症状も異なった様相を呈することもまれではない.また,同じ異常であっても個体によっては他の酵素レベルなどが異なるため,同じ臨床症状が発現するとは限らない.臨床症状(臨床所見)は患者・臨床医が把握することができる.一方,臨床検査では酵素や生成物・前駆物質の一部を測定することができる.生成物・前駆物質のレベルの検査は,例えば先天代謝異常のマス・スクリーニングで実施されている.
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