特集 リポ蛋白・脂質代謝と臨床検査
10 先天性脂質代謝異常
2.先天性酵素欠損症—1)LPL欠損症
村勢 敏郎
1
Toshio MURASE
1
1東京大学医学部第三内科
pp.1513-1517
発行日 1985年11月1日
Published Date 1985/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542917570
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はじめに
血清が乳び状に白濁する高脂血症は古く(BürgerとGrütz, 1932)から原発性(primary),特発性(idiopathic)ないしは本態性高脂血症(essential hyperlipemia)の名称のもとに取り扱われてきた.しかし,この高脂血症は血中にカイロミクロンを認めるという共通点をもった一つの症候群"chylomicronemia syndrome"であって,病因論的に原因の異なるいくつかの疾患を包含している.HavelとGordon1)は1960年,この症候群の一部にトリグリセライド(triglyceride:TG)の力口水分解酵素であるリポ蛋白リパーゼ(lipoproteinlipase:LPL)の欠損が直接の原因となって起こるカイロミクロン血症のあることを明らかにし,ここに酵素欠損症としての疾患概念が確立されたのである.
先天性LPL欠損症の頻度は100万人に1人程度であるといわれていて,きわめてまれな疾患に属する.Nikkilä2)は1983年に,それまでに酵素欠損が確実に証明された症例として58例の報告例を集計しており,わが国においてわれわれがここ数年間に他施設から依頼を受けて診断を確定しえた症例は7例である.
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