増刊号 誰でもわかる遺伝子検査
Ⅱ.各論—遺伝子検査はどういうときに必要なのか
1.遺伝子検査の適応—遺伝子検査の特性を知る
3)遺伝性疾患
小杉 眞司
1,2
1京都大学大学院医学研究科臨床生態統御医学講座・臨床病態検査学分野
2京都大学医学部附属病院遺伝子診療部
pp.923-926
発行日 2002年9月15日
Published Date 2002/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543906317
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「遺伝子検査」とは何か
まず,「遺伝子検査」の定義が問題となる.本号では,総論として,「遺伝子とは何か」,「なぜ遺伝子検査か」などは取り上げられているが「遺伝子検査とは何か」についての項はない.わが国では,特に臨床検査の分野で「遺伝子検査」という言葉が多用されるが,その意味するところが,人によって,場合によって少しずつ異なることがある.その結果,時には,誤解を招く虞も生じている.臨床検査の分野で,「感染症」「悪性腫瘍」「遺伝性疾患」を含めて「遺伝子検査」という言葉を使う際は,DNAあるいはRNAを検出対象とする検査という意味と考えたほうがよく,「核酸検査」というほうが正確と思われる.何故かというと,「遺伝子検査」で扱われるものすべてが「遺伝子」ではないからである.例えば,筆者に与えられたテーマである「遺伝性疾患」では,マイクロサテライト多型マーカーを用いた連鎖解析が行われることがあるが,ここで調べられるマイクロサテライト多型マーカーの大半は,「遺伝子」上にはない.「遺伝子」とは,蛋白質の産生など,機能に関係する単位であって,反復配列など遺伝子間のものは「遺伝子」ではないからである.したがって,その意味では,「ゲノム検査」というのが正しい.本稿では,「核酸検査」あるいは「ゲノム検査」の意味で『遺伝子検査』を扱う.「遺伝子検査」という言葉が「遺伝性疾患」の『遺伝子検査』として狭義に使われることもあり,誤解を招きやすい.
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