増刊号 臨床化学実践マニュアル
II.日常検査における異常値への対応
6.酵素成分
(9)リパーゼ,膵エラスターゼI,トリプシン
宇治 義則
1
,
岡部 紘明
1
1熊本大学医学部臨床検査医学講座
pp.140-141
発行日 1993年4月15日
Published Date 1993/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543901516
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リパーゼ(triacylglycerol acylhydrolase;lipase;LP,EC 3.1.1.3),膵エラスターゼI(pancreatopeptidase E;elastase I:EI,EC 3.4.4.7),トリプシン(trypsin;TRY;EC 3.4.21.4)はいずれも膵の腺房細胞で生成され消化酵素として働く.LPは食物中のトリグリセリド(triglyceride;TG)を加水分解する酵素である.LPにはこのほかに,リポ蛋白中のTGを加水分解するリポ蛋白リパーゼ(lipoprotein lipase;LPL),肝LP(LPLの作用を受けた後のリポ蛋白中のTGに作用),ホルモン感受性LPがあるが,膵LPとは至適pH,分子量,熱安定性などが異なり,血清中のLPのほとんどは膵LPである1,2).EIは膵の腺房細胞にプロエラスターゼとして存在し,膵液として十二指腸に分泌され,TRYにより活性化されて消化酵素として利用される.セリンプロテアーゼの一種で動脈壁や腱などに存在するエラスチンを分解する唯一の蛋白分解酵素である.エラスターゼは膵のほか白血球,脾,動脈壁,皮膚などにも存在するが,免疫学的に膵と他の臓器のものは異なる.また,膵には分子量や酵素的性質,免疫学的交差性の異なる2種のエラスターゼI(EI)とII(EII)が存在するが,EIIの測定は一般化されていない.
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