増刊号 これだけは知っておきたい検査のポイント 第6集
血液生化学検査
酵素および関連物質
リパーゼ,トリプシン
三宅 一徳
1
1順天堂大学医学部臨床病理学
pp.316-317
発行日 1999年10月30日
Published Date 1999/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402906362
- 有料閲覧
- 文献概要
異常値の出るメカニズムと臨床的意義
膵リパーゼは,膵腺房細胞で生成され,膵液中に分泌される分子量48,000の酵素で,長鎖脂肪酸エステルを加水分解し,脂肪の消化を行う酵素である.血中に活性型として存在する数少ない膵酵素の一つであり,血清中の酵素活性が迅速,容易に測定できる.ヒトでは膵のほか,舌腺,胃などにも性質の異なるリパーゼが存在するが,現在の測定法は膵リパーゼに対する特異性が高く,その他のリパーゼの影響はないと考えてよい.
トリプシンは,膵から分泌される分子量24,000の蛋白分解酵素である.トリプシンはほかの蛋白分解酵素と同様,膵腺房細胞から前酵素(トリプシノゲン)として膵液中に分泌され,十二指腸でエンテロキナーゼにより活性化されてトリプシンとなる.膵以外には存在せず,膵特異的な酵素である.血中での存在様式は主として活性のないトリプシノゲンであり,活性化されたトリプシンはprotease inhibitorであるα1アンチトリプシン,α2マクログロブリンと複合体を形成し,酵素活性を示さない.このため測定はトリプシンに対する抗体を用いた免疫学的測定法(RIA法)が用いられる.本法では交差反応を示すトリプシノゲンとα1アンチトリプシン結合トリプシンの両者が測定され,α2マクログロブリン結合トリプシンは測定されない.
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.