Letter from Abroad 海外で活躍する日本の検査技師
国により違う検査室の運営—パラグアイ2
小栗 豊子
1
1順天堂大学付属病院中央臨床検査室細菌
pp.882-883
発行日 1986年7月1日
Published Date 1986/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203792
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■外国人を襲う下痢と不明熱
日本を離れて不安なことといえば健康状態である.出発の3週間前くらいに風邪をひき,出発のときはほぼ回復していたのであるが,機内の乾燥した中では鼻も喉も干上がってしまいそうであった.安眠用の目隠しを鼻と口に当てていたが,声はかれる一方である.それに,至る所で静電気が発生する.機内のみならず,アスンシオンに着いてからも,これらの悩みは続いた.
3週間くらいしてやっと咳とかすれ声から解放された.現地に赴任している人の話だと,着いて間もない頃から激しい下痢と不明熱に悩まされるのだそうである.私は幸いなことに,すでに12日を経過したのに両者とは全く無縁であった.ところが,その晩ドイツ風のレストランで食事をした後,腹痛と下痢が始まった.東京ではこのような経験は皆無に等しかったのだが…….1〜2日たっても治る気配はない.4日目にはいささか心配になり,便をSS培地,マッコンキー培地,TCBS培地に培養してみた.しかし,検出菌は乳糖非分解の大腸菌のみで,日本の法定伝染病菌は検出されなかった.病原大腸菌の診断用血清は現地では貴重品なので,これ以上の検査はしかなった.6日目になっても下痢は止まらず,やむなくナリジキシン酸を服用した.不思議なことに,たった2回の服用でピタリと止まった.その後も何回か下痢に襲われたが,抗菌剤は服用しなかった.
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