連載 りれー随筆・193
パラグアイで学んだこと
末光 ゆき子
pp.1006-1007
発行日 2000年11月25日
Published Date 2000/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611902534
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たぐましいパラグアイの女性
私は1997年から2年間,青年海外協力隊員として南米のパラグアイ共和国に派遣された。25時間飛行機に乗りつづけ,ふらふらになってようやく到着したパラグアイ。日本からみると地球の正反対の国である。途上国の地方都市への派遣であり,比較的条件の良い暮らしが予想された。しかし……。異文化の中で暮らすというのは難しい。本来の自分を取り戻すまで半年かかった。
赴任先で用意されていた住居は,若い女子学生たちと共同生活する寄宿舎だった。自炊生活が始まったある日,夕食の支度をするため,共同の冷蔵庫にしまっておいた野菜類を取りに行った。炎天下の中1時間以上歩いて買ってきたものだった。しかし,半開きのドアを開けると,冷蔵庫の一番上の段の,解凍されかかった牛肉のかたまりから,血汁がしたたり落ちていた。皿にも載せられず裸のまま収納されていたのだ。すべてのものが生肉の血に染まって見えた。それまでの現地生活の疲れが一気に爆発した。現地の人と同じものを食べて,同じ生活をするということがどういうことなのか,初めて分かった気がした。
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