トピックス
免疫抑制酸性蛋白
川上 高弘
1
1日大臨床病理
pp.1098-1099
発行日 1984年12月1日
Published Date 1984/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543203216
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IAPとはImmuno-suppressive acid protein(免疫抑制酸性蛋白)の略で,1977年石田らが,担癌マウス血清中に免疫抑制活性を有する等電点pI 3.0〜3.4,分子量57,000の酸性蛋白の存在を見い出し,IAPと名づけたものである.さらに,担癌ヒト血清中および癌性腹水中にも同様の活性をもつpI 3.0〜3.4,分子量59,000の酸性蛋白が証明され,癌関連蛋白として注目を集めている.癌患者の腹水から精製されたIAPはα1酸性糖蛋白(α1-acid glycoprotein;α1 AG)と物理化学的に極めて類似し,さらに免疫学的にもα1 AGと同一の抗原性を有することが確認されている.しかし,IAPの精製過程でDEAEセルロースカラムクロマトグラフィーを行うと,正常ヒト血清の酸性蛋白はpI 3.1のピークが主であるのに対し,癌患者ではpI 3.0に主なピークが認められ,両者には明らかな差が認められる.
癌患者の腹水から精製したIAPと正常のα1 AGを比較すると,①等電点(α1 AG:3.1,IAP:3.0),②糖含量(α1AG:41.5%,IAP:31.5%),③分子量(α1 AG:48,000,IAP:50,000)の3点で明らかに両者は相違する.特に糖含量については,IAPでラクトース,マンノースが少なく,シアル酸は正常α1 AGの約半分と低いことが確かめられており,現在ではIAPは糖鎖不全を伴ったα1 AGと定義されている.
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