最近の検査技術
血清フェリチン
漆崎 一朗
1
,
高後 裕
1
1札幌医科大学第四内科
pp.38-42
発行日 1982年1月1日
Published Date 1982/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202422
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近年,血清フェリチンの測定が,臨床検査の一つとして取り上げられるようになり,その臨床的意義,応用について関心が持たれている.フェリチンは,本来,生体に有害な無機イオン鉄を貯蔵する蛋白質であり,肝・脾・骨髄などの諸臓器に広く分布し,鉄代謝と密接な関連を有している.図1に示すように,生体の鉄代謝は総鉄量5,000mgのうち,腸管からの1日1mgの鉄吸収のほか,老廃赤血球のヘモグロビン鉄の再利用を中心に動いており,ほぼ閉鎖された系といえる1).フェリチンは貯蔵鉄プールとして,出血などの鉄の喪失状態に応じて速やかに必要な鉄を骨髄へ供給し,ヘモグロビン合成に間に合わせたり,ヘモクロマトーシスやヘモシデローシスなど余剰の鉄イオンが増加した状態で,生体に有毒な無機イオン鉄を隔離,貯蔵する役割を担っている.さらにフェリチンは,臓器内のみならず微量ではあるが血中にも遊離してくることが知られ,この血清フェリチンの濃度は,逆に臓器,組織レベルでの生体の鉄貯蔵状態を反映している.このことから血清鉄,総鉄結合能(TIBC),不飽和鉄結合能,フェロキネティックスなどの従来用いられてきた鉄代謝の臨床検査項目に新たに加えられるべき指標といえる.さらに炎症,悪性腫瘍でも血清フェリチン値の変化が認められることから,広い応用範囲の検査法としての可能性もあげられている.本章では,フェリチンの生化学,測定方法及び臨床的意義について説明を加えてみたい.
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